株式会社清原製作所

2018.08.01 活動報告

ハイテク時代でも欠かせない職人技。高品質な製品を1個から。溶接工の技が光る。

先代から託された信頼を育む「技」をベースに、新たな挑戦が始まっている…。 

清原製作所は製缶業と言われる分野である。製缶と言えば、昔は気体や液体などを漏らさないように溶接してタンクや水槽をつくることであった。製缶業には、熟練した溶接の技術が必要であり、今は鉄板や形鋼と呼ばれる鉄やステンレスを立体的に組み上げる作業も製缶と言われる。

そんな製缶業の鉄工所を現社長の先々代が創業。時代は日本列島改造論の追い風に乗り、地方の経済も力強く歩み始めようとしていた1972年(昭和47年)であった。その後に起きる幾多の経済不況という荒波は日本のものづくりの基盤を支えてきた鉄工所にも容赦なく打ち寄せた。しかし清原製作所は、度重なる時代の変動を乗り越え、3代目へと事業を承継。そこには製缶に特化した事業展開と独自の経営理念があった。

「弊社ではタンクや溶接構造品などを製作しており、溶接がメインになります。ただ溶接だけを行なっているのではなく部材の切出し加工から曲げ溶接まで一連の作業を自社工場で一貫して行なっています」。

「今後も長年に渡って培った技術や経験値を大切にしていきたいです」と語る清原康広・代表取締役社長に、若き経営者としての思い、展望などを伺った…。

 

溶接職人としての「こだわり」は、新たな時代の強みを生む。

事業の承継について…。

小さい頃から祖父と父親が作業をしている現場に遊びに行って、働く2人の姿を見て過ごしていました。その影響かもしれませんが、都会に憧れて実家を離れたのですが、鉄工関係の学校に通って、自然と同じ仕事をしていました。

事業を手伝うようになったのは2006年(平成18年)からです。父からは後を継げとは言われませんでしたが、製缶業の会社として大切にしなければいけないことを学ぶことができました。

また製缶としてものをつくる楽しさも覚え、この仕事を極めてみたいという思いもあり、2016年(平成28年)に事業を承継し、そのときに法人化させていただきました。

正直なところ、こんな田舎で経営は大丈夫なのか…少しの不安がありました。ただ弊社には先々代からお世話になっている、しっかりした取引先があり、その不安は解消しましたが、信頼されている分、期待に応えなければというプレッシャーも感じましたね。

 

「役に立つ」仕事をする。「丁寧にまじめに」つくる。

ものづくりをしている限り、会社として大切にしていることは「信頼」されることですね。

「人と人の関係、品質、技術…」全てに言えると思います。そのためには取引先の「役に立つ」仕事をすることだと思います。

溶接は、下処理をしてから次の作業まで何時間かは間を置くという決まりがあり、早く仕上げようと1つ工程を怠ると後々の耐久性が変わってきます。やはり、「丁寧にまじめに」つくることが大切です。

取引先の「役に立つ」仕事をする。「丁寧にまじめに」つくる。それが弊社のモットーです。できる限りご依頼くださった企業の助けになれるように技術の向上にも日々努めています。

 

製缶業ならではの溶接に特化した技術の向上。

もの凄く薄い金属板をレーザーで溶接する技術など、新しい技術がどんどん開発されています。

弊社も製品によって溶接技術を使い分けています。

新しい技術の情報収集をしながら、「この仕事はどうしても清原製作所に頼まなければいけない」と言われるように更なる技術の向上を図っています。

ただどんなに新しい工作機器や技術が開発されても、それを使いこなすのは人です。製缶業は企業の規模を問わず優秀な溶接工を有する事業者が強みを発揮する分野と言われており、溶接工が培った経験値と技に勝るものは無いと弊社は考えています。

 

手作業の強みを活かし、1個からの注文にも対応。

手作業ならではのモノづくりへのこだわり。それが弊社の強みになっています。

また、機械化による製造では、大量生産をしないとコストが合わない。

その点、弊社は1個からの注文に対応することができます。それが初めてのモノであっても、今までに経験したノウハウを活かしてつくらせていただいております。

溶接技術は、機械化が進んでいる現代に至っても、溶接工の手腕によって良否が決まる部分が多く、仕上がりにも大きく影響してきます。その点、私自身が溶接工の職人でもあり、そんなに規模の大きな会社ではないので「小回りがきく」というのが弊社の売りですね。

 

新しい出会いを紡ぐ。

新たな取引には、技術を信頼していただくことが大切だと思っています。

言葉で「うちの技術はここが凄いですよ」と言っても伝わりづらい。

溶接の技は、つくったものを見てもらうのが1番です。

おかげさまで最近はメインの取引先のほかに、溶接の技を活かせる新たな仕事の依頼が入るようになりました。単発的な仕事ですが弊社の技術力を伝える第1歩になっていますね。

また「建設関係から、こんなデザインの階段の手すりをつくれますか…」みたいな問い合わせもいただけるようになりました。溶接の技術がこんなことに活かせるのか…業界が違うので新しい発見があり、やる気を刺激しますね。

 

ものづくりって、カッコいい。そんなイメージ改革を。

どんなに世の中がハイテク化、自動化されても、職人の技というものは絶対に欠かせません。

製缶に携わる職人は、溶接工として高度な技術力を持っており、溶接工は造船などの分野でも活躍している専門技術職です。あのスカイツリーも溶接工の技がなければ完成しなかったと言われています。

しかし溶接の仕事は、3K(危険・汚い・きつい)のイメージがどうしても根強い職業です。

また高齢化でベテランの職人さんが減ってきています。

いまこそ若い溶接工を育て「技」の伝授を促進することが私たちの時代の役目ではないかと感じています。

そのためには若い世代が「ものづくりって、カッコいいな」と、夢を持ってもらえるように今までのイメージを変えることができれば、これからも日本のものづくりが発展していくのではないかと思います。

弊社では、そんな思いから微力ですがイメージ改革に取り組んでいます。

 

溶接の技術が秘めている無限大の可能性に挑戦したい。

溶接でなければできない世界があることを、異業種の方と話をして感じているので、金属製のものから派生する、今までつくったことがないような、いろいろなものづくりにチャレンジしてみたいですね。アイディア次第で、その可能性は無限大に広がるはずです。

そして子どもたちに「これお父さんがつくったやつなんやで」って自身を持って言えるようなものづくりがしたいと思いますね。

 

世界に通用する、なくてはならない信頼の「ものづくり会社」へ。

正直、はっきりと頂上は見えておらず、日々、草をかきわける状況です。今後の経営方針をあえて言うなら、弊社が1番大切にしている「信頼関係」の輪を広げたいと思っています。

それなりには製品の品質、人と人のつながり、納期、どれか1つ欠けても維持できません。当たり前のことを継続して当たり前にこなし、職人としての技を磨いていくことが信頼の継続と拡大に結びつくと信じています。

ものづくり大国の日本で、ものづくりの仕事をさせていただいている以上、「日本でつくったものは違う」と世界の人々にあらためて認めてもらえるような「ものづくり会社」にしたいと思います。

そして「清原製作所がないと困る」と言っていただけるようになることが目標ですね。

もちろん溶接の職人をやっている限り、誰よりも美しいものをつくり続けます。

 

企業情報

事業所名:株式会社清原製作所
業務内容:製缶業(主要製造品:装置架台、金属製タンク、溶接構造品)
代表者:清原 康広
創業年:昭和47年(1972年)
設立年:平成28年(2016年)
住所:兵庫県朝来市岩津1108
電話番号:079-677-0751