ジャージー牛のみの牧場運営、それは理想のジェラートをつくるために。こだわりの力。
酪農から加工、販売までの全てを一貫経営をする。
「あいす工房らいらっく」の創業は、平成13年であるが、酪農経営は、現在店長の祖父の代から始まっている。昭和48年には、県下で初めての自然流下式の60頭牛舎を建築するなど、先駆的な経営で兵庫県の酪農界をリードするトップランナーでもあったという。
その後を継いだ運営責任者の吉井英之オーナーは、酪農の担い手である家族が次々に他界し、酪農経営が難しくなった。大学で酪農を学んだ英之オーナーは、その危機を乗り越えるために、酪農から加工、販売までの全てを一貫経営するという夢を実現するべく、6次産業化に着手。平成15年3月にあいす工房の店をオープンした。
そんな父親から加工・販売部門を引き継いだ吉井裕也・店長は、「社長である父が牧場を経営し、息子の私があいす工房の店長として、アイスクリームをつくっています。ちなみに、個人の酪農家としては、ジャージー牛のみなのは、兵庫県でうちだけとなります」と語る。次代を担う吉井裕也・店長にいろいろと伺った。
6次産業化の第2幕開演
オンリーワンのジェラート製造を追求。
大手とは異なるジェラートの店をオープンするために、牧場の牛をホルスタインからジャージー牛に入れ替えました。このこだわりと「自家製牧場のジャージー乳を100%使用」がうちの強みですね。
乳脂肪が高く、おいしいジャージー牛乳は、濃厚でコクのあるおいしいジェラートになります。「スイーツ」と呼べる濃厚なジェラートです。ジェラート製造のレシピにはとことんこだわり、他店にはない配合でらいらっくオリジナルジェラートに仕上がっています。
それと、うちの特色は冒険精神です。新商品を開発する上で他ではやっていないことに着目し、チャレンジするようにしています。4年前にケーキ工房「パティシエールlilac」を建設。ケーキ・ブリュレ・ミルクジャム等の製造をはじめ、ようやく軌道にのってきたところ、アーモンド・ブリュレを数年前からつくり始めているのですが、ふつうのブリュレを販売しているところは、いっぱいあるのですけど、そこに自家焙煎のつくりたてのおいしさをキャラメリゼしたアーモンドクラッシュをトッピングしたブリュレは、日本で唯一のオンリーワン商品です。発想が評価され、平成25年度の「五つ星ひょうご」に選定されました。
また、うちでは開店当初から、急速冷凍機を導入しており、全て急速冷凍できる状態を考え、商品開発を行なっています。
おいしさの開発に終わりはない。
ジャージー乳にこだわるからには、他の素材もいい加減な物を使いたくない。ジェラートに使う素材は全て自分で厳選します。バニラはバニラビーンズを煮出しているので、エッセンスにはない香りの良さがありますね。目と舌で感じるつぶつぶが本物の証拠です。平成18年、雑誌ブルータスにてバニラアイスが、日本1のグランプリを獲得しました。昨日より今日、今日より明日、常に最高のおいしさにこだわり続けています。
私自身がうまいと判断しないもの以外は、基本的に出したくないという思いがあります。モノづくりにおいて妥協してしまうと、それまでなので…。基本的においしさの開発・探求にゴールは無いという思いが強いですかね。
ゴールを決めてしまうと、もうそれ以上は伸びない。だから常に新しいものを見聞きするようにしています。朝来市だけじゃなく、もっと広域な情報を取り入れて、日本を代表する新しいものをつくり、ここ朝来から全国に広げることができたらいいなと思って頑張っています。
酪農家ならではのビジネスモデルをつくりたい。
兵庫県内にジェラート屋酪農家さんがいます。それぞれが仲間であり、良きライバルでもあり、酪農の発展を考えて、お互いに切磋琢磨しています。しかし、自分のところで新しく考えたものを取られたくないという気持ちは皆さんあるのかなぁと思うのです。父が築きあげた6次産業化路線を受け継ぎ、私なりの新しい夢というか、ビジネスモデルをつくりたいです。父に負けないようにね。
地域の流行を全国区に高めたい。
朝来市ではやっているもの、但馬ではやっているもの、それは所詮、但馬という地域の中だけのことなのですよ。それが東京の流行は、日本の最先端の流行であり、全国区なのです。田舎同士のネットワークももちろん大事だと思うのですが、もっと最先端の情報やノウハウに精通した人や都会のネットワークを通じて、入手した新しい情報を朝来市に持って帰ってきて、地域資源を活かした全国区のモノをつくって、朝来の人であったり、観光に訪れた方であったりが「こんなおいしさ、はじめて」と笑顔で食べていただけたらいいなと思う。
私は田舎者のプライドを誇るより、もっと素直に都会の人々と交流できる環境をつくりたい。このド田舎に1人でも多くのお客さんに来てもらって、喜んでいただきたい…。そのためには、どんなモノをつくったらよいのかを考えています。
独自の製法により、1つしかないモノをOEM製造。
レシピはすべて試行錯誤を重ねた上に開発したオリジナル。地元産のフルーツのほか、地域の旬の素材等をいろいろと使っています。
今、ジェラートの種類は80種になりました。店頭には、常時18種類を並べています。また、酒造やホテル、ジェラート店などのOEMでの製造を行なっています。現在、全国約20店舗のオリジナルアイスの製造を請け負っています。OEMや「コラボ商品」の開発を今度も積極的に展開したいですね。販売は、うちの店頭のほか、道の駅やネット通販でも行なっています。
展示会での出逢いが、コラボ商品の開発へ。
うちの牧場と店舗は、北近畿豊岡自動車道と播但自動車の和田山インターチェンジからは、北へ自動車で15分くらいの典型的な中山間地域にあります。近隣に大きな町がなく、商圏が小さいので、どうしても地域外へ打って出る必要があります。その解決策として、ネット販売とイベントの参加は、うちのジェラートのおいしさを多くの人に知ってもらう良い機会と考えています。また、展示会などの参加がきっかけで、コラボ商品が生まれたこともあります。大阪市であった農産物の展示会で、加古川の農事組合の方が、うちのジェラートに「一目惚れ」してくださり、コラボの提案をいただき、加古川の地元食材を使った「黒豆茶ジェラート」を完成させました。
攻めのマーケティング。
多くの方に知ってもらうには、宣伝を行なうのがいちばん。しかし、それには多額の宣伝予算が必要です。うちは幸いなことにオープン当初よりマスコミの方々にお世話になっており、雑誌・テレビなどのマスコミ取材の依頼は、積極的に応じるようにしています。良く取材拒否を売りにしているところがありますが、あれは黙っていても人の集まる立地のところでの話だと思います。
マーケティングにおいて、一貫して攻める姿勢は、父親譲りです。うちの特色・伝統になるかもしれませんね。
清掃に始まり、清掃に終わる。
工房の運営で心掛けているのは、徹底した清掃ですね。朝30分、製造終了後に1時間半。お店の営業終了後に1時間。1日3時間は皆で清掃をしています。この清掃だけは妥協したくないですね。
兵庫県の認証食品を取ったときに清掃項目は100点満点中、85点で1発通過でした。
トップランナーを目指して。
すごい少年のような話になるのですけど、私自身の中で「どうせやるなら、トップを取れ」というのがありまして、朝来市でトップになりたい、朝来市内でトップをとったなら、今度は、但馬でトップをとりたい、兵庫県で1番になりたい。そして…とにかく、上は目指したいという思いでやっています。
祖父が酪農のトップランナーだったように、私も今の仕事でトップランナーを目指します。
企業情報
事業所名:あいす工房らいらっく
運営統括責任者:吉井 英之
店長:吉井 裕也
創業年:平成13年
住所:兵庫県朝来市和田山町白井486
電話番号:079-670-1766
ホームページ:http://www.lilac-ice.com/
営業時間:11:00~17:00
定休日:水曜日
保有認証等:ミルクジャム(アーモンド)平成26年度「五つ星ひょうご」、アーモンドブリュレ 平成25年度「五つ星ひょうご」