此の友酒造株式会社

2018.07.30 活動報告

伝統を、未来へ。

創業元禄3年 手づくり一筋に300余年。但馬杜氏が伝える、郷土に根ざした本物の酒。

此の友酒造は、元禄3年に加古屋酒店として創業。加古屋の歴史をさかのぼると、武田信玄の家臣、飯尾右京之進直利へとつながる。天正10年に武田氏が滅んだため、性を木村に改め、屋号を加古屋と名乗った。寛永2年頃、播州加古川から矢名瀬に移り住んだという…。そんな歴史噺に地酒「但馬」は花を添える。

但馬と丹波の境にそびえる粟鹿山から永い歳月をかけて流れ出る清冽な天然水、厳選して磨いた酒米、但馬杜氏の伝統の技、それらが織りなす香りと味わいは、地元の人たちに愛され続けている。

郷土に根ざした酒造りを行う、此の友酒造株式会社の木村祥三・代表取締役は「うちのお酒は地酒なので、大手の酒造メーカーさんではやらない、手間暇をかけた酒造りにこだわりたい」と語る。

手づくりにこだわる一方、焼酎やリキュールなどジャンルに囚われない商品開発や新たな日本酒造りの試みにも果敢に挑む此の友酒造。いくつもの時代の荒波を乗り越え、生き抜いてきた老舗「酒蔵の未来」が見えてくる。

 

歴史という浪漫を一献。

地酒への消費者ニーズに合わせた酒造りを目指す。

私が大学から帰ってきて、酒蔵の仕事を始めた頃は、隣近所の皆さんとかが「お宅のお酒、おいしいよ」と飲んで頂けていたのです。それが地酒だと、私はずっと思っていました。ですから、地元の人の晩酌として愛されるお酒造りを目指してきました。しかし、時代は変わってきましたね。「晩酌は紙パックなど、大手メーカーさんの手頃なお酒。いざという時は地酒を用意する」ということが普通になっていて、昔とまったく逆の感じです。また、日本酒を好む外国の方や女性の方が増えてきています。そうした日本酒を飲む方の変化などもあり、これからは、京阪神なり、東京、そして海外の方にも目を向けて、いろいろな商品を製造・販売していかなければいけないと思います。私としての考え方・意識もかなり変わりました。

 

若き但馬杜氏がいる酒蔵。

うちには、日本4大杜氏の1つ、但馬杜氏の技術を承継した若き杜氏がいることが強みです。技術承継のため、杜氏のもとで全工程を経験させました。師匠の杜氏から、「もうすべて教えることは教えた」とお墨付きを頂き、私どもの但馬杜氏が誕生しました。40歳代とまだ若いのですが、その技は鑑評会で認められており、うちの酒造りの出来栄えを左右する存在となっています。杜氏による手間暇かけた丁寧な酒造りというのが、うちのこだわりでもあり強みでもあります。

 

四季醸造という新たな試み。

昔と違って、年間雇用を皆さんが求められるようになり、杜氏の方が冬だけ来て、1年分の酒を造るという形が時代とそぐわなくなっています。私どものような小さな酒蔵では、冬の1期醸造では、年間雇用するのは難しいのです。そこで杜氏を中心に少人数で、年間を通じて造れる日本酒に挑戦しようと考え、冷蔵庫の中で造れるような小さな仕込みで行なえる、四季醸造を始めたのです。

おかげさまで、うちには但馬杜氏の技を承継した専任の杜氏がおりますので…。そのへんが強みと言えば強みかと思います。年間でフレッシュな吟醸酒が造れるというのは、これからの日本酒の販売においては、かなりの強みかなと思っています。

 

歴代の杜氏・蔵人が惚れ込んだ天然水が蔵内に。

日本酒は冬に造ったお酒を秋に飲むのが1番、秋上がりと言って、旬の食べ物と楽しむ、旨い酒です。それを1番左右させるのが水だと私は思っています。うちでは洗米から仕込みまで、すべて但馬と丹波の境にそびえる粟鹿山から湧き出る天然水を使用しています。粟鹿山は、ちょうど分水嶺なのです。一方は青垣側から加古川、そして太平洋へ。もう一方は、山東町から円山川、そして日本海へ。うちの酒蔵がある山東町は、まさに良質な水と出会える場所なのです。

酒に向く水というのは、どちらかと言えばカリウムとからカルシウム分が多いほうがいいとされています。この近くにある鯨峠という所から鯨の骨が出てきたことがあります。つまり、昔は海の底だったという証拠。この辺りの水は、そういう貝殻層等を通って、湧き出ていると思うのです。また鉄分がすごく少なく、酒造りにこれほど適した天然水は数少ないと思います。灘や伏見に酒蔵が集まっているのも水なのです。

 

うちには主力にしている商品がない。

うちは主力にしている商品はないと思います。あえて言えば、晩酌に向くようなお酒から、1本1万円ぐらいの高級酒というような純米大吟醸的なものまで、すべてうちでは製造しています。どれが主力という区別はありません。どれを飲んでもおいしいと言って頂ける自信があります。飲んで頂けるような地酒。日本をひとつの地域と考えた地酒。そういう形で地域を広げていって販売をしていかなければいけないなと思います。

そういう意味では、うちは「日本酒、焼酎、リキュール酒」の製造免許を持っているので、商品を小量ロットより商品化できます。例えば、酒米を生産する地域の農場さんとコラボした商品開発をはじめ、蔵元ならではのPB商品開発も積極的に取り組んでおり好評を得ています。

 

日本の地酒。世界の地酒品質。

うちのお酒を全国の方、そして日本に来られる海外の方にも飲んでもらって「おいしい」と言って頂きたい。もうそれだけが今後の営業目標ですね。

「おいしい」の一言のために頑張って、この酒蔵を守っていきたいと思います。

 

まじめな本物の地酒。その品質を大切にしたい。

芸術品みたいに置物ではないので、皆さんの期待に応えられるように、品質にはこだわりたいと思っています。

思うのですが、口だけでおいしいから飲んでくれ、売ってくれというのは、結局メッキが剥がれる。製造でいちばん大事なことは、嘘のない真面目な気持ちだと思います。口先だけなら、どうでも言えるし、口でうまく商売を伸ばす方もおられる。それはそれで技術だと思います。けど、私はそうじゃなくて、真面目な本物を飲んでもらいたい。但馬杜氏による但馬流低温長期醸造法により譲された地酒の奥深さを味わってもらいたい。それが基本です。

うちが300余年も続いているのは、地酒品質へのこだわりと、従業員を宝と思う気持ちです。

 

企業情報

事業所名:此の友酒造株式会社
代表者名:勝原 誠
創業年:元禄3年(1690年)
住所:兵庫県朝来市山東町矢名瀬508番地
電話番号:079-676-3035
ホームページ:http://konotomo.jp/
【保有認証等】

■全国新酒鑑評会「金賞」3年連続受賞(平成26年、平成27年、平成28年)
■大阪国税局 燗酒用日本酒の部「優秀賞」9年連続受賞(平成18年より/平成21年を除く)
■但馬産業大賞受賞「キラリと世界へ輝く技術部門」(平成27年度)