○朝来市公正な職務の執行の確保に関する条例
令和2年3月26日
条例第1号
(目的)
第1条 この条例は、職員の倫理の保持及び法令等の遵守の推進のために必要な事項を定め、公正な職務の執行の確保に関し必要な措置を講ずることにより、透明性の高い市政運営の推進、市政に対する市民の信頼の確保及び公益の増進を図ることを目的とする。
(1) 職員 地方公務員法(昭和25年法律第261号)第3条第2項に規定する一般職に属する職員並びに同条第3項第1号に規定する職に属する職員のうち市長、副市長及び教育長をいう。
(2) 職員等 次に掲げる者をいう。
ア 職員
イ 市との委託契約、請負契約その他の契約に基づき市の事務又は事業を行う者(以下「受託者」という。)並びにその役員及び当該事務又は事業に従事している者
ウ 指定管理者(地方自治法(昭和22年法律第67号)第244条の2第3項に規定する指定管理者をいう。)並びにその役員及びその管理する公の施設の管理業務に従事している者
エ 派遣労働者(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)第2条第2号に規定する派遣労働者をいう。)で市に役務を提供する者
(3) 法令等 法律、法律に基づく命令(告示を含む。)、条例、規則その他の規程をいう。
(4) 事業者等 法人(法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものを含む。)その他の団体及び事業を行う個人(当該事業の利益のためにする行為を行う場合における個人に限る。)をいう。
(5) 任命権者 地方公務員法第6条第1項に規定する任命権者をいう。
(6) 公益通報 職員等が、公益を守ることを目的として、次に掲げる市政運営上の事実(以下「通報対象事実」という。)が生じ、又は正に生じようとしている旨を朝来市公正職務推進委員会又は朝来市公正職務審査会に通報することをいう。ただし、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他不正な目的で行うものを除く。
ア 法令等に違反する事実
イ 人の生命、身体、財産その他の利益若しくは環境に被害を発生させ、又はこれらに重大な影響を与えるおそれがある事実(アに掲げる事実を除く。)
(7) 要望等 職員以外の者が職員に対して行う市の事務又は事業若しくは当該職員の職務に関する要望、提言、提案、意見、苦情、依頼その他これらに類する行為で職員の作為又は不作為を求めるものをいう。ただし、議会、説明会、公聴会等の公開の場でなされたもの、陳情書、請願書等の公式の書面(電磁的記録(電子的記録、電磁的記録その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。)を含む。)によるものその他通常の適正な職務の執行に係るものであることが明らかであるものを除く。
(8) 不当要求行為 要望等のうち次に掲げる行為をいう。
ア 暴力行為等社会的相当性を逸脱した手段により要求の実現を図る行為
イ 正当な理由なく、特定の者に対して、特に有利又は不利な取扱いを求める行為
ウ 著しく粗野、乱暴又は威圧的な言動により、職員に身の安全の不安を抱かせる行為
エ 正当な権利行使を装い、団体の威力を示す等の手段により、物品の購入又は金品若しくは権利の取得を不当に要求する行為
(職員が遵守すべき職務に係る倫理原則)
第3条 職員は、市民全体の奉仕者であり、市民の一部に対してのみの奉仕者でないことを自覚し、職務上知り得た情報について市民の一部に対してのみ有利な取扱いをする等市民に対し不当な差別的取扱いをしてはならず、常に公正な職務の執行に当たらなければならない。
2 職員は、常に公私の別を明らかにし、いやしくもその職務や地位を自ら又は自らの属する組織のための私的利益のために用いてはならない。
3 職員は、法令等により与えられた権限の行使に当たっては、当該権限の行使の対象となる者からの金銭、物品その他の財産上の利益の供与若しくは供応接待(以下「贈与等」という。)を受けること等の市民の疑惑又は不信を招くような行為をしてはならない。
4 職員は、職務を執行するに当たっては、法令等を遵守するとともに、公益の増進を目指し、全力を挙げてこれに取り組まなければならない。
5 職員は、勤務時間外においても、自らの行動が公務の信用に影響を与えることを常に認識して行動しなければならない。
(任命権者の責務)
第4条 任命権者は、率先して前条に規定する職員の倫理原則を遵守するとともに、公正な職務の執行により、市政に対する市民の信頼を確保することに努めなければならない。
2 任命権者は、職員に対し、倫理原則が堅持されるよう、その公正な職務の執行に資するための啓発、研修を実施するとともに、体制の整備その他必要な措置を講じなければならない。
(管理職員の責務)
第5条 管理又は監督の地位にある職員(以下「管理職員」という。)は、その職責の重要性を自覚し、服務規律の徹底及び公正な職務の執行に当たり、自らその管理又は監督をする職員の模範となるよう行動しなければならない。
2 管理職員は、その管理又は監督をする職員の倫理の保持及び法令等の遵守の推進について適切な指導及び助言を行わなければならない。
(市民等の義務等)
第6条 市民は、この条例の目的を理解し、職員による公正な職務の執行について協力するよう努めるものとする。
2 何人も、職員に対し不当要求行為その他職員の公正な職務の執行を妨げるおそれのある行為をしてはならない。
(職員倫理規則)
第7条 市長は、第3条に規定する職員の倫理原則を踏まえ、職員の職務に係る倫理の保持を図るために必要な事項に関する規則(以下「倫理規則」という。)を定めるものとする。
(贈与等の報告)
第8条 職員は、事業者等から、贈与等を受けたとき、又は事業者等と職員の職務との関係に基づいて提供する人的役務に対する報酬として倫理規則で定める報酬の支払を受けたとき(当該贈与等を受けた時又は当該報酬の支払を受けた時において職員であった場合に限り、かつ、当該贈与等により受けた利益又は当該支払を受けた報酬の価額が1件につき5,000円を超える場合に限る。)は、これらの価額等を記載した贈与等報告書を、贈与等を受けた日又は報酬の支払を受けた日から14日以内に、任命権者に提出しなければならない。
2 任命権者は、前項の規定による贈与等報告書の提出を受けたときは、朝来市公正職務審査会に対し、当該贈与等報告書の写しを送付しなければならない。
(贈与等報告書の保存及び閲覧)
第9条 任命権者は、前条第1項の規定により提出された贈与等報告書を受理した日の翌日から起算して5年を経過する日の属する年度末まで、これを保存しなければならない。
2 何人も、任命権者に対し、前項の規定により保存されている贈与等報告書(贈与等により受けた利益又は支払を受けた報酬の価額が1件につき2万円を超える部分に限る。)の閲覧を請求することができる。ただし、公にすることにより、人の生命、身体、財産等の保護又は犯罪の予防、捜査その他の公共の安全及び秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあるとしてあらかじめ任命権者が認めた事項に係る部分については、この限りでない。
(朝来市公正職務推進委員会の設置)
第10条 市における公正な職務の執行の確保の推進に関し組織的な対応を図るとともに、公正な職務の執行を損なう行為に係る調査を行うため、朝来市公正職務推進委員会(以下「委員会」という。)を置く。
2 委員会の所掌事務は、次に掲げるとおりとする。
(1) 第3条に規定する職員の倫理原則に係る啓発、指導及び相談に関すること。
(2) 第14条第1項に規定する通報対象事実に係る調査に関すること。
(3) 第24条第1項に規定する不当要求行為に係る調査に関すること。
(4) 前3号に掲げるもののほか、市長が必要があると認めること。
3 委員会の委員は、職員のうちから市長が任命する。
4 前3項に定めるもののほか、委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。
(朝来市公正職務審査会の設置)
第11条 市における公正な職務の執行の確保の推進に係る調査及び審査(以下「審査等」という。)を行うため、地方自治法第138条の4第3項の規定に基づく市長の附属機関として、朝来市公正職務審査会(以下「審査会」という。)を置く。
2 審査会の所掌事務は、次に掲げるとおりとする。
(1) この条例の改廃(軽微なものを除く。)に際し意見を述べること。
(2) 第8条第2項の規定により提出された贈与等報告書の内容に関して意見を述べること。
(3) 第16条第1項に規定する通報対象事実に係る審査等に関すること。
(5) 前各号に掲げるもののほか、市長が必要があると認めること。
3 審査会は、委員5人以内で組織する。
4 委員は、職員の倫理の保持に関し公正な判断をすることができ、法令等に関し専門的知識を有する者又は学識経験を有する者のうちから市長が委嘱する。
5 委員の任期は、2年とする。ただし、委員が欠けた場合における補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
6 委員は、再任されることができる。
7 委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いたときも同様とする。
8 市長は、委員に職務上の義務違反その他委員としてふさわしくない行為があると認めるときは、解嘱することができる。
9 前各項に定めるもののほか、審査会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。
(公益通報)
第12条 職員等は、通報対象事実が生じ、又は正に生じようとしている場合は、委員会又は審査会に対し、公益通報をしなければならない。
2 公益通報は、原則として実名により、誠実に行うものとし、この制度を濫用してはならない。
3 前項の規定にかかわらず、職員等は、匿名により公益通報をすることができる。この場合において、当該職員等は、当該公益通報の内容が事実であると信ずるに足りる相当の根拠を示さなければならない。
(公益通報者の保護)
第13条 市長及びその他の関係する任命権者(以下「市長等」という。)並びに受託者及び指定管理者(これらの者の役員を含む。第5項において同じ。)は、公益通報を行った職員等(以下「公益通報者」という。)に対し、当該公益通報を行ったことを理由としていかなる不利益な取扱いもしてはならない。
2 公益通報者は、公益通報を行ったことによって不利益な取扱いを受けたと思料するときは、委員会又は審査会にその是正の申立てをすることができる。この場合において、公益通報者が公益通報をした以後に受けた不利益な取扱いは、特段の理由がない限り、当該公益通報をしたことを理由としてされたものと推定する。
3 前項前段の規定により是正の申立てを受けた委員会又は審査会は、公益通報を理由として不利益な取扱いがされたと認めるときは、当該不利益な取扱いをした者に対し、原状回復その他の改善を勧告するものとする。
4 不利益な取扱いをした者が前項の規定による勧告に従わないときは、委員会又は審査会は、その事実を公表するものとする。
5 市長等並びに受託者及び指定管理者は、公益通報者を保護するため、公益通報者が特定されるおそれのある情報については、当該公益通報者の同意がなければ公開してはならない。
(1) 不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他不正の目的でなされたとき。
(2) 公益通報の内容が通報対象事実に該当しないとき。
(3) 公益通報の内容が不明確であり、公益通報者の説明によってもその事実が明らかにならないとき。
2 委員会は、当該公益通報の内容に市長等又は委員会の委員が関与していると思料され、調査の公正な実施に支障を及ぼすと認めるときは、前項の規定にかかわらず、審査会に必要な審査等の実施を求めなければならない。
4 第1項の調査は、公益通報者及び調査に協力した者の秘密を保持し、知り得た個人情報の保護に留意するとともに、必要かつ相当と認められる方法により実施されなければならない。
(通報対象事実に係る委員会の報告に伴う是正措置等)
第15条 市長等は、前条第5項の規定により通報対象事実がある旨の報告を受けたときは、直ちに当該通報対象事実の中止その他是正のために必要な措置、法令等に基づく措置、再発防止のための必要な措置その他の適切な措置(以下「是正措置等」という。)を講じなければならない。
2 市長等は、前項の規定により是正措置等を講じたときは、速やかにその内容を審査会に報告しなければならない。
(1) 調査を実施しないことが不適当と認めるとき。
(2) 調査の内容又は是正措置等の内容が不十分であると認めるとき。
2 市長等は、前項の規定により是正措置等を講じたときは、速やかにその内容を審査会に報告するとともに、その概要を公表しなければならない。
3 第1項の規定にかかわらず、市長等が正当な理由がなく是正措置等を講じなかったときは、審査会は、当該報告等の内容を公表するものとする。
(公益通報をした者に対する通知)
第18条 委員会又は審査会は、公益通報者に対し、その取扱い(第14条第1項各号のいずれかに該当する等のため調査を実施しない場合を含む。)、調査又は審査等の結果を通知しなければならない。ただし、匿名の公益通報者及び通知を希望しない公益通報者については、この限りでない。
(要望等に対する基本原則)
第19条 職員は、市政運営に対する要望等の重要性を理解し、誠実かつ適切に対応しなければならない。
2 職員は、要望等が不当要求行為に該当すると認めるときは、これを拒否しなければならない。
(要望等の記録)
第20条 職員は、要望等を受けたときは、その内容を確認し、簡潔かつ正確に記録するものとする。この場合において、職員は、要望等を行った者(以下「要望者」という。)に対し、当該要望等の内容が公開又は公表の対象となることを教示するものとする。
(1) 公式又は公開の場において行われる要望等で、議事録その他これに類するものとして別に記録されるとき。
(2) 要望等の内容が単に事実、手続等に関する問合せ、苦情、意見等であることが明らかであると認められるとき。
(3) 要望等(前号に該当するものを除く。)を受けた場において用件が終了し、要望者に対し、改めて対応し、又は回答する必要がないとき。
(4) 公の施設又はこれに類する施設における利用者がその利用に関し日常的に行う要望等であるとき。
(5) 多数の者に職員が順次対応するような場合であって、要望等を記録することが困難であるとき、又は個別に記録する必要性が乏しいとき。
3 要望等を受けた場合において、その内容が不当要求行為に該当するかどうかを判断できないときは、その記録を委員会に提出しなければならない。
(確認の機会の付与等)
第21条 要望者は、職員に対し、前条第1項に規定する記録の内容について確認を求めることができる。この場合において、職員は、要望者に対し、当該記録を提示しなければならない。
2 要望者は、前項の確認の結果、記録されている事実に誤りがあり、又は事実でない内容が記録されていると思料するときは、当該記録の訂正を求めることができる。
(要望等の処理)
第22条 要望等は、規則で定めるところにより処理するものとする。
(不当要求行為への対応)
第23条 職員は、不当要求行為があったと認めるときは、これを拒否するとともに、その内容を記録し、直ちに上司及び所属長に報告しなければならない。
2 所属長は、前項の規定により報告された行為の内容が不当要求行為に該当すると認めるときは、不当要求行為を行った者(以下「不当要求行為者」という。)に対し、当該不当要求行為に応じない旨を伝えるとともに、当該記録を委員会に提出しなければならない。
2 審査会は、前項の規定による報告を受けたときは、速やかに審査等を実施しなければならない。
3 審査会は、市長等に対し、前項の審査等の結果、不当要求行為に該当すると認めるときは是正措置等についての意見を付して通知し、及び不当要求行為に該当しないと認めるときはその旨を報告するものとする。
(不当要求行為に係る審査会の通知等に伴う措置)
第25条 市長等は、前条第3項の規定による通知を受けたときは、直ちに事実の確認を行うとともに、不当要求行為者に対し、是正措置等を講じなければならない。
2 市長等は、前項の規定により是正措置等を講じた場合において、当該不当要求行為者がこれに従わないとき、及びその後においても当該不当要求行為を継続して行うときは、当該不当要求行為者の氏名、当該不当要求行為の内容その他必要があると認める事項を公表することができる。
3 市長等は、前項の規定による公表をしようとするときは、あらかじめ、不当要求行為者に対しその旨を通知し、意見を述べる機会を与えるとともに、公表することの適否について審査会の意見を聴かなければならない。
4 市長は、不当要求行為者が市の競争入札の参加資格を有する事業者等であるときは、前項の規定にかかわらず、別に定めるところにより指名停止その他必要な措置を講ずるものとする。
(違反行為の調査等)
第26条 市長等は、職員がこの条例又はこの条例に基づく規則に違反する行為(以下「違反行為」という。)を行った疑いがあると思料するときは、直ちに調査を行わなければならない。
2 市長等は、前項の調査を終了したときは、委員会及び審査会に対し、速やかに当該調査の結果を報告しなければならない。
3 市長等は、第1項の調査の結果、違反行為があったと認めるときは、その違反の程度に応じ、地方公務員法第29条第1項の規定に基づく懲戒処分その他必要な人事上の措置を講ずるものとする。
4 市長等は、前項の規定にかかわらず、委員会又は審査会の調査又は審査等により関係者の処分を行う場合において、公益通報者が通報対象事実に関与した者であるときは、当該公益通報者に対する処分の量定を軽減することができる。
5 懲戒処分の手続及び効果については、朝来市職員の分限及び懲戒に関する手続及び効果に関する条例(平成17年朝来市条例第50号)の規定によるものとする。
(運用状況の公表)
第27条 市長は、毎年度、公益通報及び不当要求行為の件数並びにその概要を公表しなければならない。
(委任)
第28条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。
附則
(施行期日)
1 この条例は、令和2年4月1日から施行する。
(審査会の委員の任期の特例)
2 この条例の施行後最初に委嘱される審査会の委員の任期は、第11条第5項本文の規定にかかわらず、令和4年3月31日までとする。