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ロングインタビューvol.7 埋蔵文化財センターの学芸員として朝来市の魅力を発掘(大川拓也さん)

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ページID:0012482 更新日:2023年10月31日更新 印刷ページ表示

ロングインタビューvol.7 埋蔵文化財センターの学芸員として朝来市の魅力を発掘(大川拓也さん)

大川拓也さん (移住先:朝来市和田山地域)

大川さん

プロフィール

◎プロフィール

大川さんは兵庫県赤穂市の出身。29歳(2023年10月時点)。
大学では考古学を専攻され、卒業後は石川県での発掘調査の仕事を経て朝来市に移住。

学芸員としての「Jターン就職」

 大川さんは、2019年から朝来市に移住。
 現在は、市の職員として遺跡や文化財の記録、保管、調査研究を行う学芸員の仕事をされている。
 大川さんの出身は、県内の赤穂市。高校卒業後は、大学の文化財学科へ進学し、考古学を専攻。その後、「石川県金沢城調査研究所」に就職。金沢城復元のプロジェクトの一員として発掘調査の仕事に従事されていた。
 将来的には、地元で就職をしたいと考えていた大川さん。ある日、朝来市の学芸員採用情報を見つけたことが、朝来市と大川さんを結びつけるきっかけとなった。
 無事に朝来市の職員採用試験に合格した大川さん。いわゆる「Jターン」という形で、念願の就職を実現することができた。

 朝来市の最も有名な観光スポットである「竹田城跡」。雲海から現れる城跡の神秘的な姿は「天空の城」や「日本のマチュピチュ」とも呼ばれている。
 その竹田城跡で発掘調査をすることとなった大川さん。
 城跡内の地層から遺構や遺物を発見することで、過去の出来事や文化的な側面を調査し、文化遺産の保護・保存を行う。そして、その文化財を未来の世代に伝えるという重要な役割を果たしている。
 現在、大川さんが調査中の現場は、観光用通路として使用されていた部分。この通路部分を掘り起こすことで、埋もれていた石畳が見つかっている。発掘された石畳から上の層には、瓦の層があり、さらに上には遺構を守る保護盛土の形跡も残っていた。
 このように発掘された石畳や排水溝、建物礎石の位置や築城時期を調査しながら、竹田城郭の全容を少しずつ明らかにしている。

​​       発掘調査

        ◎「天空の城」とも呼ばれる竹田城跡。平成30年度から城跡の整備事業に伴う発掘調査を行っている。
           2023年11月には「第30回全国山城サミット」が朝来市で開催される。

多岐にわたる仕事の内容

 竹田城跡の発掘調査から、次の段階として出土品の管理・保護を行うのは「朝来市埋蔵文化財センター 古代あさご館」。大川さんは、発掘調査などの現場仕事のほか、ここで文化財に関わる全般の仕事をされている。
 朝来市には、竹田城跡以外にも、茶すり山古墳・池田古墳・城ノ山古墳・船宮古墳等、但馬を代表する王墓があり、そこから出土した貴重な文化財、またそれに関わる膨大な資料が埋蔵文化財センターには保管されている。全てが一般公開されてはいないが、その数には驚かされた。

 また、ここでは、発掘された土器や銅鏡などのレプリカも展示されており、大川さんはそれらのガイドの業務も行っている。そして、イベントの時には「勾玉作り体験」や、小学生向けの「出前授業」の依頼にも対応しているという多忙ぶり。
 「ガイドや出前授業は、古墳や城跡などの話をするのですが、歴史の知識に関してはまだまだ未熟だと感じています。」と本人は話されるが、歴史の分野に関してはさすが専門職と言わざるを得ないほど、様々な疑問に即答してくれる。人柄も穏やかで、ガイドや講師の仕事も器用にこなされている。

       埋蔵文化財センターの業務

        ◎埋蔵文化財センターで学芸員として勤務する大川さん。業務の内容は多岐にわたるため、新たな発見が絶えない。

歴史を感じる朝来市のお気に入りスポット

 大川さんは、子供の頃によく父親に連れられ、寺社仏閣へ訪れていたことから、歴史的建造物や人物に興味を持つようになり、そのことが影響して学芸員の道を志すようになったそうだ。そんな歴史好きの大川さんが、朝来市のお気に入りスポットを教えてくれた。「一番に思いつくのは、生野町の口銀谷(くちがなや)地区の町並みですね。移住する以前にも生野銀山や銀谷(かなや)まつりに訪れたことがあって、懐かしさもあります。」と話す大川さん。生野町の口銀谷地区一帯は、過去に生野銀山の鉱山町として栄え、その面影が現在もいたるところに残り、情緒溢れる町並みを形成している。歴史や古いものが好きな大川さんにとっては、絶好のスポットといえるだろう。

 「今年は白井大町藤公園の藤まつりに初めて行ったのですが、藤の花がとても綺麗で感動しました。」と話される。「白井大町藤公園」は、毎年5月に藤の花が満開を迎えるタイミングで「藤まつり」が開催される。
 また、他にも市内で行われるイベントにはよく出向かれるとのことで、神子畑選鉱場跡や竹田城跡のライトアップイベント等も印象に残っているそうだ。
 朝来市には、自然や文化など地域が持つ資源を活かした観光スポットやイベントが多く、そこも大川さんが強く魅力を感じるポイントだという。

       朝来市のお気に入りスポット

        ◎大川さんのお気に入りスポット。生野町口銀谷の街並み(左)・白井大町藤公園の藤棚(左)

移住して5年目。朝来市の印象は。

 朝来市に移住された時には、独身であった大川さん。移住から5年が経ち、現在では結婚され、夫婦ともに朝来市内に勤められている。すでに朝来市の生活にも慣れておられると思うが、移住した当初の印象を聞いてみた。
 「最初はやはり、気候が気になりましたね。車の運転も慣れていなかったので雪が降ったときは少し戸惑いました。」と率直な思いを話してくれた。同じ県内といっても、瀬戸内海側と日本海側では大きく気候が異なる。赤穂市出身の大川さんにとって、朝来市の気候は馴染むまでに時間がかかったのかもしれない。

 また、大川さんは和田山地区の地域自治協議会で「地域担当職員」としても活動されている。「地域担当職員」とは、人口減少や高齢化等の様々な課題を抱える地域において、市役所と地域とのパイプ役となって対応したり、イベントの運営補助や、夜間の見回り等、地域のサポートを行う役割を担う。「朝来市に来て感じた事は、住民の皆さんとの関わりがすごく親密だということです。それは職場でも言えることなのですが、親しみを込めて名前を呼んでくれたり、話し方もどこか温かくて親近感が湧きます。」と、話す大川さん。朝来市で生まれ育つと当たり前のように感じるが、確かに都市部よりも人と人とのつながりや距離感の近さがあるのかもしれない。
 また、この地域の話し言葉はどこか温かい印象があり、移住者からすると安心できるポイントになるようだ。大川さんが言うには、朝来市の人はおだやかで大人しいイメージだそうで、ここにも、県内でありながら地域性の違いを感じているという。

これからの「あさご暮らし」に抱く思い

 学芸員として、また市の職員として働き、朝来市の歴史、文化に強い愛着を持つ大川さんの目標は、竹田城跡が「雲海」という景観のイメージだけではなく、もっと歴史的な側面に価値があることを多くの人に知ってもらうことだという。「城」というわかりやすい建造物はないが、現存する石垣や、発掘途中の城跡の構造を明らかにして、今以上に魅力のある竹田城跡にしたいと考えているようだ。
 学芸員といってもその仕事の内容は様々で、今回お話を伺ってはじめてその業務の中身の濃さに気付かされた。文化財に関しても、遺跡や出土品がその全てではなく、地域で受け継がれている伝統のまつりや行事を「無形民俗文化財」として記録を残し、継承事業のサポートも行う事も彼らの役割。今回、大川さんの話を聞いて、文化財の価値や魅力は、それを発掘し調査、研究する人たちがいることで高められ、それらが観光資源となり、地域の発展にもつながるということが、改めてよくわかった。
 移住者の視点と持ち前の探究力で、朝来市の魅力を発掘する。大川さんのこれからに期待したい。

        発掘調査

        ◎文化財という面から、これからも朝来市の魅力を高めていきたいと意気込みを語ってくれた。

 

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