ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ

ロングインタビューvol.8 自らのスキルを活かして、子どもたちが新しいことを経験できるまちに(中家 宜嗣さん)

現在地 トップページ > あさご暮らし。 > あさごのひと > 先輩移住者の声 > ロングインタビューvol.8 自らのスキルを活かして、子どもたちが新しいことを経験できるまちに(中家 宜嗣さん)

本文

ページID:0013704 更新日:2024年2月2日更新 印刷ページ表示

ロングインタビューvol.8 自らのスキルを活かして、子どもたちが新しいことを経験できるまちに(中家 宜嗣さん)

中家宜嗣さん (移住先:朝来市山東地域)

中家さん

プロフィール

大阪府豊中市出身。
2017年に当時の住まいの東京から、地域おこし協力隊として朝来市へIターン移住。
朝来市へ移住してすでに7年、協力隊の任期終了後は個人事業を立ち上げ、現在は家族で朝来市山東町で暮らしている。

東京からの「Iターン移住」

 移住のきっかけとなったのは、当時、東京で開催されていた移住イベント。将来の子育て環境を田舎で…と考えていた中家さんは、それに参加し朝来市への移住を決めることになる。
 「朝来市のことは全く知らなかった」と話す中家さんだが、市の環境や地域おこし協力隊の存在を知り、はるばる東京からの移住を決行。移住1年目は、地域おこし協力隊として朝来市山東町粟鹿地区の自治協議会に所属し、地元産コシヒカリのブランド化をミッションに活動を開始。米のパッケージ企画やネットショップを通じた販路拡大に務めた。​

スキルを活かした地域おこし

 学生時代から音楽に携わり、大阪でも飲食業を営みながらバンド活動をしていた中家さん。地域おこし協力隊として2年目、そのスキルを活かした活動で地域に貢献できることはないかと考えた中家さんは、朝来市で暮らす子どもたちに目を向けるようになる。
 子どもたちが何を求めているのか、どんなことに楽しみを感じてもらえるのかを調査し、親しみやすい「音楽」で地域の子どもたちと交流する「音楽の郷構想」をミッションに掲げ、市内小・中学校の課外授業として音楽イベントを企画するようになった。
 イベントでは、演奏する曲を中家さんがアレンジして、それぞれの楽器の譜面を作って演奏していたとのこと。中には感動して泣きだす親御さんもいたそうだ。生の演奏を間近で体感したり、音楽に合わせて自由に遊ぶなど、通常の音楽の授業では体験できない機会を子どもたちに提供し、音楽を通した新しい魅力を創出することに注力した。何か尖ったことをするというのが中家さんの持ち味で、地域に刺激を与える存在になっている。

    中家さん2

 ◎市内イベントでのコンサートの様子。音響機器の操作も行いながら演奏も。

映像制作の仕事

 地域おこし協力隊として3年の任期を終えた中家さん。その後、音響機器の取扱いの腕前を知っている知人の紹介で撮影や映像制作の仕事を勧められ、それを機に映像制作の個人事業をスタートさせた。依頼のあった様々な内容を撮影・取材し、その映像を編集したものを成果物として提出する。
 「正直に言うと、映像の仕事を目指していたわけではありませんでした。でも、今となっては面白いし、本当にありがたいと思っています。今後もドローンを使った撮影など、映像や編集の仕事の幅を増やしていきたいと思っています。」
 元々、大阪在住の頃に、映像に効果音やナレーションをつけるMAスタジオで働いていたことから、映像編集においてはある程度の知識はあったそうだ。ただ、撮影に関しては経験がなかったため、最初の1年は、ニュースの作り方をはじめとした技術を学んだという。
 「会社員の時に様々な映像を見てきたので、なんとなく良い絵というのは頭の中にあるんです。それに近づけられるように、撮影は試行錯誤しながらやっていました。」と、飄々とした様子で話す中家さんだが、実はかなりの努力家と見える。

       中家さん3

◎編集作業や撮影の様子

移住後の生活から見えてきたもの

 移住から7年が経ち、朝来市にも馴染んできた中家さんが感じていること。それは、実は朝来市は「もっと子育て世代に優しいまちにできるのではないのか」ということだ。現状、朝来市は子どもの医療費が無料であり、待機児童もなく、ファミリーサポートセンターもあったりと、一般的には子育てがしやすいまちと言われている。では、どうして「もっとできることがある」と感じたのだろうか。
 「確かに朝来市は、子育てするには良い制度が整っていると思います。ただ、さまざまな場面で、子どもより高齢者の方が参加しやすい仕組みになっていると感じることがあります。例えば、あるイベントは平日の昼間をメインに開催している。そうなると、その時間に学校や仕事に行っている人たちは参加できないですよね。この先、イベントや事業を継続させていき、町の魅力を底上げするには若者の力がもっと必要だと思うんです」。
 中家さんにも小学生になる子どもがいる。移住をしたこの地で、子供たちがより魅力的で都会にも劣らない体験をして成長していってほしいという親心から、地域の課題、そして自分自身の課題として捉えているのだ。
 一見、否定的に感じてしまう発言も、裏をかえせば地域の未来にとって今一番大切にしないといけないものを真剣に考えているということではないだろうか。今のままではもったいない。地域に根付いている古くからの慣習や風習を今一度見直して、子どもたちや若者が地域に積極的に関わることのできる環境を整える必要があると感じておられるようだ。

子育て支援の事業を考える

 中家さん夫婦は、それぞれが個人事業者として活動されている。現在は合同会社を設立し、お互いの事業を包括する形態で営んでおられる。
 「個人事業の一番のメリットは、やはり時間に融通がきくという点です。そうなると、会社勤めをされている方の大変さが余計に感じられるようになりました。特に子育て世代については、時間が足りていないと思います。」と、話す中家さんも同じ子育て世代。今後は、そのような子育て世代の皆さんを支援するような新たな事業を、夫妻で企画・実施したいと考えているそうだ。
 時間のない親に代わり、時間のある大人が子どもの対応をする。昔は、ご近所付き合いで当たり前にしていたことを、現代のやり方で実践しようと奮闘されている。

        中家さん4

若い世代が好きでいられるまちにしたい​

 昔と比べて子どもに対して過保護になっている現代。安全性を考慮したためではあるが、中家さんは、特に田舎は過保護になり過ぎ、刺激の少ない環境になってしまっているのではないかと考えている。市内全域の現状は分からないが、自転車の乗れる範囲がかなり限定的になっていたり、校則が厳しくなっていたりという事実を知り、そう考えるようになったそうだ。
 「今の田舎に住む子どもたちは、好奇心や行動力を抑えられてしまっているのではないかと心配になります。例えば行動範囲については、都会なら電車やバスで外出するのが当たり前なので比較的刺激を受けやすいですが、田舎では家から現地まで家族等の送迎が当たり前になっているので、何が危険で何が安全なのかも分からないまま成長している気がしています。」と、子どもの自立について心配されていた。確かに昔は自転車でかなり広範囲に遊びに行っていた。むしろそれが田舎ならではの遊び方だった。もちろんそれに伴って危険なこともあっただろうが、自ら様々な刺激を受けに出かけていた。
 これについても中家さんは、様々なことをただ禁止するのではなく、禁止する前にどうすれば安全を確保できるか、その設備や仕組みを考えることが大人の役割だと考えている。この他にも、教育現場や地域のイベントなどの取材をすることで様々なことに気付かされたという。仕事を通して得た情報は、中家さんにとって地域の将来を考えるきっかけになっているのかもしれない。


 中家さん自身は、将来的には異なる分野の事業にも手を広げ、雇用を生み、人を育てるようにしたいと話される。音楽活動や仕事を通して感じたより良い地域の将来像を、今の自分たちが作らないといけないという使命感。そして、若者が朝来市の未来に期待し、ずっと住み続けたい場所と思えるようにしたいという力強い意志を感じた。


ちゃすりんに質問する