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一緒に考えよう!子どもたちが人生を前向きに歩んでいくための心の土台づくり(コラム連載vol.1 依存と自立)
コラム連載vol.1「依存と自立」
「依存と自立の行き来」が生きやすさに繋がる
今年は「平成30年7月豪雨」によって、朝来市内外で大きな被害が出てしまいました。被害に遭われた方におかれては精神的にも辛い状況になられたとお察しいたします。そしてそんな時に、「助けて」「手伝ってほしい」と言えること、また言える相手がいることは、その方が心を折られることなく、強くしなやかな人生を歩まれるためにとても重要なことだと思います。また、一旦はそうして辛い気持ちを受け止めてもらい、充分に英気を養うことができたならば、また意欲を持って自立した生活に戻られていくことでしょう。
このように、人間生きていれば、誰かに依存して甘えたい時もあれば、自ら奮い立って自立していきたい時もあるものです。私は、この「依存と自立の行き来」が上手にできる人、つまり甘えたい時に素直に甘えることができ、自分の意思で動きたい時に動くことができる人ほど、強くしなやかな人生を送られると考えています。
反対に「依存と自立の行き来」ができないと、甘えることができなかったり、自分の意思を表に出せなかったりして、ストレスが溜まりやすく、生きづらくなりがちです。
子どもに甘えと自立の成功体験を与えていくのが大人の役割
このように、「依存と自立の行き来」が上手にできるか否かはその人の「生きやすさ」「生きづらさ」に大きく影響していくわけですが、このことを人材育成の観点で見た時に、我々大人は子どもに対してどのような取組ができるのでしょうか。
私は、経験から多くを学んでいくのが人間ですから、「甘えることの成功体験」「自立して何かをすることの成功体験」を積み重ね、自己肯定感(※1)を育んでいくことが、その子の「生きやすさ」に繋がっていくのではないかと考えています。
これを大人側から見ると、子どもが依存しようとする時はその甘えたい感情を放置せずに受け止め、一方で自立しようと意欲を示した時には手出しをせずに見守る、と言い換えることができます。
例えば、不安そうな顔で「お母さんと寝たい」と甘えてきた時には、「一緒に寝ようね」などとまずは気持ちを受け止めてあげると、安心して眠りやすくなります。
こうして「甘えることの成功体験」を得た子どもは自分が大切にされていることを認識し、自己肯定感(※)が高まることでしょう。
逆に「今は忙しいから独りで寝なさい」と大人の都合を押し付けられてしまうと、気持ちを受け止めてもらえず不安なままで寝つきにくいでしょうし、甘えたい気持ちが居座り続け、自立に向かおうという意欲は湧きにくくなります。
また朝の身支度で、意欲を持って一人で着替えようとしている時は、まずはその気持ちを受け止め、「やってごらん」と見守ってあげましょう。そうして見守ってあげると、ゆっくりとでも一人で着替えができたならば「自立して何かをすることの成功体験」を得て自己肯定感が高まるでしょうし、もし途中でつまずいたとしても「一番上のボタンだけは難しいからとめて」とまた「依存」に戻ってきやすくなります。
逆に子どもの意に反して、親が着替えさせた方が早く済むからという大人の都合で「過保護」になってしまうと、子どもは気持ちを受け止めてもらえず苛立ちを感じますし、やってみようという意欲は削がれ自立が遠のいていくことになります。
※自己肯定感とは
自分の良いところもダメなところもひっくるめて自分を認め、「私は大切な存在である」と肯定する気持ちのことで、子どもの心が成長していく上での土台となる部分。主に幼少期に両親や周りの大人たちとの信頼関係を通して育まれやすいと言われています。
毎号具体例を挙げて考察していきます
このコラムでは、毎号具体例(大人と子どもの関わりによって生じる子どもの変化や行動パターン)を挙げながら、子どもの自己肯定感を高める関わり方について考察していきます。来月は情緒不安定や依存症になりやすい原因と、その予防について取り上げる予定です。このコラムの内容は子育てに限らず、日常のさまざまな場面で応用ができると思いますので、ぜひご一読ください。
コラム一覧
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コラムの筆者の紹介
前川 進介 さん
昭和53年(1978)丹波市生まれ
(株)みんなの村代表取締役
平成28年度から朝来市人財育成プロジェクトディレクターとして、ASAGOiNGゼミU-18の講師や、自己肯定感を育むための言葉かけなどをまとめたパンフレット『子どもたちの未来のために子育て中の私たちが今できること』づくりに携わっています。