本文
一緒に考えよう!子どもたちが人生を前向きに歩んでいくための心の土台づくり(コラム連載vol.2 依存症を招く希薄なつながり)
コラム連載vol.2「依存症を招く希薄なつながり」
何かに救いを求めて記憶が無くなるまでお酒を飲んだところで、救いは得られない。私の苦い記憶です。7年ほど前、私は経営している会社でのトラブルから、鬱状態に陥りました。当時助けて欲しいと願っていた家族とのつながりを感じることができなくて、飲酒量が増え、アルコールに依存していきました。幸い、さまざまな人とのつながりの中で自分を見つめ直すことができ、鬱を克服し、今ではお酒を楽しく飲めていますし、家族とも仲良く暮らしています。
実はこのような経緯があって、私は人の心理について深く考えるようになり、気づけば今は広報誌でこんなことを書いています。人生何があるかわからないものです。
さて、私の経験からも言えることですが、人は人とのつながりを希薄に感じていると、不健全な何かへの依存に陥りやすくなると考えられています。これはアメリカの話題ですが、ベトナム戦争で極度のストレス状態におかれ麻薬依存に陥った米兵でも、帰国後家族とのつながりを感じながら過ごせば、心のバランスを取り戻し、結果的に95%の人が麻薬使用を辞められたという追跡調査があります。(出典 chasing the scream:Johann Hari)。それだけ「人とのつながり」と依存症は関係性があるのです。
特に心が育まれていく子ども時代において、「家族との健全なつながり」を築いておけば、将来に渡って依存症になりにくくなります。裏を返せば、幼少期に「家族との健全なつながり」を築けなかった場合は、将来的に何かしらの依存症に陥る可能性が高くなります。
「家族との健全なつながり」というのは、子どもが甘えたがっている時には気持ちを受け止めて甘えさせ、自立したがっている時には過保護・過干渉にならず見守ってあげるつながり、つまり先月号でお伝えした「依存と自立の行き来」ができるつながり、と言い換えることができます。
例えば、一緒に遊んで欲しいと望む子どもの情緒を受け止めず、おもちゃを買い与えることで誤魔化し続ければ、子どものストレスのはけ口が物欲になり、「買い物依存症」になりやすくなります。また親とのコミュニケーションを取りたがっている子どもに、孤食をさせることが常態化してしまうと、孤独を埋めるために必要以上に食べ続け、食べることに依存する「過食症」になりやすくなります。
また同じ「食べる」行為でも、孤食の寂しさに耐えきれず、親にかまってほしいと願うあまり、十分な食事を摂らずに痩せ細ることを選んでしまい、「拒食症」になってしまう子もいます。これはある種の「自傷行為」とも言えると思いますが、いずれも、子どもの情緒的な訴えを放置してしまった結果と言えます。
こうして、子どもの「甘えたい気持ち」を受け止めずに親の都合で放置していると、親とのつながりを別の物で補おうとするさまざまな依存状態や自傷行為を引き起こしやすくなるのです。
もちろん、仮に何かの依存症になってしまったとしても、大人になってからの人間関係の中で、例えば健やかな夫婦関係を築くことで依存状態から抜け出すことも可能でしょうし、親友との信頼関係があって救われることだってあろうかと思いますが、まずは、社会の最小単位である「家族」の中でのつながりを確かなものにして、将来に渡って依存症を防ぐことが望ましいことだと思います。
依存症までいかずとも、例えば子どもがSNSやゲームばかりしていることが気になったら、子どもの情緒的な訴えを受け止めてみることで、もしかしたら何かしらの変化が訪れるかもしれませんね。
来月は「必要以上に人目が気になる心理状態」について考えていきたいと思います。
コラム一覧
平成30年8月から連載しているコラムの一覧へ
コラムの筆者の紹介
前川 進介 さん
昭和53年(1978)丹波市生まれ
(株)みんなの村代表取締役
平成28年度から朝来市人財育成プロジェクトディレクターとして、ASAGOiNGゼミU-18の講師や、自己肯定感を育むための言葉かけなどをまとめたパンフレット『子どもたちの未来のために子育て中の私たちが今できること』づくりに携わっています。