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種別:兵庫県指定有形民俗文化財
所在地:朝来市多々良木
関西電力奥多々良木発電ダムの建設に伴い、奥多々良木の民家が20戸ほど湖底に沈むことになり、多々良木の民俗調査が徹底的に行われました。
その際、井上昇一郎氏の住宅が、元禄中期における南但馬の農家様式を色濃く残していることがわかり、昭和49年(1974)に現在地に移築復元、昭和50年(1975)3月に兵庫県有形民俗文化財に指定されました。
旧井上家住宅正面
旧井上家には、建築当初のころと思われる屋敷家相図が残されています。
間取りは「ミセの間」「奥の間」「寝間」の三間取りで、土間に面した部屋がひとつの間になっている「広間型」であり、この地域における農家の典型的な「田の字型」四間取りの原型ともいわれています。
これは、農作業場、子どもの遊び場、応接間といった多目的に使用されたものと考えられます。また、土間を挟んで馬屋があり、当時、牛馬と一緒に屋根の下で暮らしていた様子が伺えます。
建築当初と考えられる屋敷家相図
囲炉裏はなかの間の中央に切られています。
庭から見て、奥の座をヨコザといい主人が座り、右をタノモト(主婦の座)といいます。
左は客座、手前をキジリと呼んでいます。
玄関から見たなかの間
建築年代の古いことを示す「ちょうながけ(手斧仕上げ)」の柱が至るところに見られ、昔の名残をとどめています。