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森 はな(朝来市出身児童文学作家) ― やさしさおしえてくれたひと ―
森はなってどんな人?
森はなは、朝来市和田山町宮田出身の児童文学作家です。養父市、朝来市、高砂市で32年間の教員生活を経て、退職後、童話を本格的に執筆しました。
戦前から戦後の但馬を舞台に、知的障害のある青年と村の人々との心の交流を柔らかな但馬弁で綴った最初の作品「じろはったん」で日本児童文学者協会新人賞を受賞し、「遅咲きの新人」として脚光を浴びました。続いて「こんこんさまにさしあげそうろう」で絵本にっぽん大賞を受賞しました。その後、80歳で亡くなるまで、ふるさと但馬の風景を舞台にした物語を多く刊行しました。
森はな文学の根底に流れるのは、「いとおしむ心」です。人をいとおしむ、自然をいとおしむ、社会を、そして、ふるさとをいとおしむ心です。
「じろはったん」は、朝来市立大蔵小学校の児童により歌物語「じろはったん」として披露され、長年歌い継がれています。また、ミュージカルや紙芝居となり、大勢の人々の心に感動を届けています。森はなが伝えたかった「いとおしむ心」は、今もなお、しっかりと受け継がれているのです。
森はなの生涯
- 1909(明治42)年
兵庫県養父郡大蔵村宮田(現 朝来市和田山町宮田)に生まれる - 1916(大正5)年
養父郡大蔵小学校(現 朝来市立大蔵小学校)に入学 - 1924(大正13)年
15歳で但馬を離れ、兵庫県明石女子師範学校に入学 - 1928(昭和3)年
師範学校を卒業、教師となり養父郡南谷小学校(現 養父市立大屋小学校に統合)へ赴任 - 1929(昭和4)年
養父郡養父小学校(現 養父市)に転任 - 1932(昭和7)年
大蔵小学校(現 朝来市)に転任。同僚の森 種樹と結婚 - 1936(昭和11)年
荒井小学校(現 高砂市)に転任。加古川に転居 - 1952(昭和27)年
荒井小学校退職。助教員として伊保小学校(現 高砂市)へ再就職
学校劇に取り組み、第1回NHK近畿学校劇コンクールで最優秀賞を受賞 - 1960(昭和35)年
32年間の教員生活を終えた後、本格的に童話を書き始める。
神戸児童文学「あすの会」同人 - 1974(昭和49)年
初めて出版した作品「じろはったん」が、第7回日本児童文学者協会新人賞を受賞。
64歳での受賞に「遅咲きの新人」と話題 - 1980(昭和55)年
「じろはったん」毎日放送(ラジオ)で放送される。芸術祭ラジオ放送部門で大賞受賞 - 1982(昭和57)年
「こんこんさまにさしあげそうろう」第5回絵本にっぽん大賞受賞 - 1984(昭和59)年
NHK「チャンネル神戸」で「はな先生の童話教室」放送
NHK「おはようジャーナル・おんな西東」で「はな先生は本の先生」放送。第1回加古川文化賞受賞 - 1985(昭和60)年
サンテレビ「ライブラリィフライディ」で「森はな先生の作品を語る」放送 - 1986(昭和61)年
国際ソロプチミストアメリカ連盟より婦人栄誉賞受賞 - 1987(昭和62)年
毎日放送(ラジオ)「おはなしどんぶらこ」に出演
神戸新聞社より第41回平和賞受賞 - 1989(平成元)年
6月逝去(享年80歳)
森はな文学の特徴
森はな文学のテーマは、“いとおしむ心”です。「人」「自然」「ふるさと」をいとしむ。
はなは、すべてのものを“いとおしむ心”から、優しさは生まれてくるものであり、優しさは、謙虚な心から生まれてくるものだと思って優しさを求め続けていくのだと述べています。
「こんこんさまにさしあげそうろう」「キツネの花よめいしょう」「一二(ほい)とうげ」などでは、親子の情愛、特に母の子を思う心が中心となっています。こよなく愛したふるさと但馬地方への思いと人の情けの源である“いとおしむ心”に満ちた作品ばかりです。
作品紹介
- じろはったん 梶山 俊夫 画(牧書店 1973年 現在はアリス館) 英語・ドイツ語訳あり
- ひいちゃんとタチアオイの花 梶山 俊夫 絵(PHP研究所 1978年)
- こんこんさまにさしあげそうろう 梶山 俊夫 絵(PHP研究所 1982年)
- こはる先生だいすき 梅田 俊作 絵(ポプラ社 1987年)
- キツネの花よめいしょう 梶山 俊夫 絵(PHP研究所 1980年)
- おさよつばき 梶山 俊夫 絵(PHP研究所 1984年)
- お葉つきいちょう 梅田 俊作 画(サンリード 1987年)
- ハナ先生ものがたり 松井 行正 絵(アリス館 1975年)
- もどってくるもどってこん 若菜 珪 絵(PHP研究所 1980年)
- わたしはめんどりコッコです 梶山 俊夫 絵(金の星社 1985年)
- キツネとしゅんぺいじいさん 梶山 俊夫 絵(教育画劇 1988年)
- わたしトシエです 梶山 俊夫 絵(アリス館 1977年)
- おばあちゃんは落語屋さん 梶山 俊夫 絵(学校図書 1981年)
- 一二(ほい)とうげ 梶山 俊夫 絵(PHP研究所 1986年)
- 土の笛 梶山 俊夫 絵 森 俊樹 補筆(PHP研究所 1996年)
※森はな作品のほとんどは、今では手に入れることが難しくなっています。
朝来市の図書館には「森はなコーナー」があり、多数の蔵書がそろっていますので、ぜひご利用ください。
森はなの代表作「じろはったん」の「木(こ)の葉の舟」の章で、じろはったんが戦死した親友への思いを届けるために泰山木(タイサンボク)の葉を海に流すシーンがあります。
平成30年の森はな没後30年記念事業で、その泰山木を森はな文学の「いとおしむ心」のシンボルとして、和田山図書館前に植樹しました。
開花は6月ごろで、5月下旬には白い大きな蕾をつけていました。
森はなパンフレット
森はな顕彰会
森はな顕彰会は、森はなの「慈しむ心」や業績を郷土に、未来に伝えることを目的として、2015年(平成27年)8月に発足しました。
多くの方々が森はな作品にふれて下さることを願って、読書感想文コンクールや紙芝居の作成・寄贈を行っています。
また、森はなの代表作「じろはったん」に倣い、震災で亡くなられた方たちを思い、復興を願うメッセージを書いたタイサンボクの葉を被災地の海へ流す行事「木の葉の船流し」などを実施しています。
森はな顕彰会について、詳しくは森はな顕彰会のホームページ<外部リンク>をご参照ください。